具体的な報酬体系について説明しよう。
ヘッジファンドの報酬体系は、基本的に二つのパ−ツに分けられている。
一つは投資信託と同じように、純資産残高に対して一定率が徴収されるマネジメント・フィ−。
もう一つが運用成果に対して徴収されるパフォーマンス・フィ−だ。
インセンティブ・フィーと称することもある。
また、パフォーマンス・フィ−の計算方法には、「ハードルレート方式」によるものと、「ハイウォーターマ−ク方式」によるものとがある。
ハードルレ−ト方式とは、あらかじめ一定期間後に一定率のレ−トで運用されるという前提のもとに計算される報酬制度だ。
つまり、数年後には100が110になっているという前提が設けられる。
そのうえで、実際に1年間運用した結果、100が130になった。
ある期間において、一定の利回りで運用結果が出ることを前提に、それを上回った運用利益分に対して運用報酬率が徴収されるファンドの運用資産残高が過去のピークを超えた場合、その超えた部分に対して遂用報酬率が徴収される。
もちろん、運用成果が悪化してハードルレ−トを超えられなかった場合には、パフォーマンス・フィ−はかからない仕組みになっている。
ハイウォーターマ−ク方式は、ファンドの運用資産残高が過去のピ−クを超えた場合、その超えた部分に対してフィーがかかるという仕組みになっている。
たとえば、現在の運用資産残高が130で、過去のピ−クが150だった場合は、パフォーマンス・フィーがかからず、マネジメント・フィ−のみが徴収される。
ところが、その後ファンドの運用資産残高が160まで上昇したとしょう。
過去のピ−クである150を上回っているため、ここではじめてパフォ−マンス・フィ−を徴収できるようになる。
絶対的リターンの実現を目指すヘッジファンドにとって、成功報酬制が一番しっくりと来る報酬体系なのだろう。
ちなみにハードルレ−ト方式とハイウォーターマ−夕方式とで、どちらの方式を採用しているファンドが多いのかを調べると、圧倒的にハイウォーターマ−ク方式だという結果が出ている。
それでは現在、世界におけるヘッジファンド市場の規模は、どのくらいになるのだろうか。
M証券が調査したところによると、数字は少し古いものになるが、2000年時点で約5000億ドル。
Vの調査によると、1999年が4800億ドル、2000年が5200億ドル、そして2001年が6000億ドルとなっている。
何よりも注目されるのが、TCMの破綻によってヘツジファンドに対する風当たりが強まった1998年以降も、ヘッジファンドの市場規模は着実に伸びていることである。
この背景としては、ヘッジファンド市場に参入してくる投資家層が、多様化したことがあげられるだろう。
M証券米国大手の総合金融サービス会社。
証券、資産運用、クレジット・サービスの主力3事業において常にトップシェアを誇る。
V、1992年に設立されたへッジファンド関連の調査をする機関。
当初、ヘッジファンドは一部の富裕層に属する個人投資家が中心だった。
だが、昨今では超低金利、株安など投資環境の悪化、あるいは経済や市場のグローバル化の影響によって、各国市場の連動性が高まったことなどから、年金基金などの機関投資家も、分散投資効果を高めるべく、ヘッジファンドに注目している。
その結果、ヘッジファンドに投資しようとする投資家層の多様化が進み、市場規模の拡大につながっているのだ。
では、実際にヘッジファンドの市場には、どのような投資家が参入しているのかを見ていこう。
「ファミリー・オフィス」といっても、日本では耳慣れない言葉だと思う。
要は、数十億円を超す金融資産を持っている富裕層が、専属のファンドマネジャーや弁護士、会計士、税理士を雇って、資産運用を行う会社のことだ。
日本でも、最近は起業家がIPO(株式公開)をすることによって、莫大なキャッシュを得ている人が増えている。
そういった人たちの資金を、税金面などに配慮しつつ、効率的な運用を行っている専属オフィスと考えてもいいだろう。
ファミリー・オフィスの形態はじつにさまざまだ。
外部の投資顧問会社に運用委託をしているところもあれば、自前のファンドを立ち上げて、積極的に自己勘定で運用しているところもある。
また運用自体も、ファンドによるもの以外に、ベンチャー投資や不動産投資、企業買収や再編などの投資銀行的業務に至るまでさまざまだ。
こうした違いは、ファミリー・オフィスを持っている富裕層が、どのような目的を持って自己資金を運用しているのかによる。
ただ、共通の特色があるのも事実だ。
基本的には安定的に、絶対的リターンの実現を目指して運用しているケ−スが多い。
特に米国では、富裕層の多くが親などからの相続によって莫大な資産を引き継いだというケ−スよりも、それこそ裸一貫で自ら企業を立ち上げ、大きく成長させてきた人の方が多い。
それこそ、余人にはわからない苦労をして築き上げてきた資産を運用するのだから、下手なリスクを負わないのは自明だろう。
そのため、短期的な運用成果を追求するのではなく、資産の実質的な価値を長期間にわたって保全することに、運用の主眼が置かれている。
まさに、伝統的なヘッジファンドの運用に適した投資家ともいえる。
そもそもヘッジファンドは、運用リスクを最小限に抑えて、絶対的リターンを実現することに最大の価値が置かれているからだ。
そのためか、ファミリー・オフィスが運用委託している投資顧問会社の日%超がヘッジファンドであり、資産保全という観点から、ヘッジファンドを中心としたオルタナティブ投資を重視している。
ファミリー・オフィスで働いている人たちは、その多くが大手金融機関で活躍した経歴を持っている専門家であり、運用成果に基づく高額の報酬でスカウ卜されているケ−スが多い。
中にはファミリー・オフィスで活躍したあと、そこで得た高額の報酬を元手に、自らファミリー・オフィスを立ち上げて独立するケ−スも少なくないといわれている。
意外に思うかも知れないが、欧米の大学は生徒から集めた授業料、助成金、寄付金を運用するに際して、ヘッジファンドを有効活用しているケ−スが多い。
こうした大学基金が擁している運用資金の額は、かなりの規模に上る。
米国のハーバード大学の1兆円弱、イェ−ル大学の7000億円、プリンストン大学の5000億円といった具合にだ。
現在、全米で100を超える大学の基金が、ヘッジファンドで運用しているという調査結果もあるくこれら大学基金の運用方針は、運用資金の性格上、元本の保全が最優先とされている。
こうした運用方針に基づいてポ−トフォリオが組まれているわけだが、その中でオルタナティブ投資、ヘッジファンド運用の占める比率は、かなり高い。
ニューヨーク大学やイェ−ル大学では、総資産の3分の1程度がヘッジファンドの運用に因されており、そのほかの大学の中にも、プライベート・エクイティ投資とへッジファンド運用で、総資産を占めるところもある。
運用目的は、ヘッジファンドを活用してより高いリターンを目指すというよりも、むしろ元本の保全を目的にしている。
つまり、リスクヘッジの一環として、ヘッジファンドをはじめとするオルタナテイブ投資を活用しているのだ。
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